現在で、水頭症、癲癇、手の震えの症状がある、50代イギリス人女性のお世話を初めて8ヶ月が経ちます。私がお世話をしている女性は、とにかくアクティブで、誰とでも交流を図ろうとする、「超社交家」です。
私が一年彼女に関わることで、何ができるのかと考え続けて、ようやく自分なりの目標が固まってきました。その目標とは、「相手を尊重し、理解しようとする力」をつけさせることです。彼女のサポートをしながら、周りの環境を見てきたところ、彼女はとても優しくて社交的なのですが、「相手を尊重する」ことがとても苦手ということに気づきました。精神が子どもなので、とにかく注目がほしいということ、そのためには手段を選ばず、嘘などを言ってしまうこと、こういったことを当たり前のように受け入れていては彼女のためにならないと思い、そういった状況になった際にはしっかりと話すように心がけてきました。
初めは、全く進歩がみられなく、やはり精神が子どもといっても、もう大人だし障害もあるので、ずっとこのままなのかなぁと思っていましたが、最近少し彼女が変わってきました。例えば、自分が汚したものを以前はそのままにしていたものも、私が嬉しくないという表現をしていたら、自らなんとかして片付けるようになりました。また、いくら彼女が私にかまってほしくても、私が休みの日には気を遣って、付きまとわることをしなくなりました。私たちは一緒に住んでいるので、勤務時間が決まっていてもプライベートを尊重してもらうのは至難の業だったりします。8ヶ月経ってようやく、彼女と私の中で「共同生活ルール」のようなものができあがって、お互いそれを守るようになりました。
このボランティアプログラムに参加してよかったと思うことは、一般留学では関わることのできない人たちと、深く関わることができるという点です。一般留学で、障害者の方たちと関わる機会はないに等しいと思いますし、ましてや一緒に暮らすなんて体験は、できないでしょう。また、イギリスの福祉関係の会社に派遣されることで、イギリスでの働き方を体験することができます。イギリス人スタッフの働くことに対する考えや、日常の会話などから、一番ローカルに近いところで、コミュニケーションができます。
彼女との生活はあと4か月で終わります。私にとって彼女は、フラットメイトであり、友達であり、私の子どものようでもある、不思議な存在となりました。彼女と暮らす一年は、間違いなく一生忘れられない宝物になるでしょう。